湘南ぴゅあ物語 2

16 12月

湘南ぴゅあ物語 <全3回> (1992年 ぴゅあ通信vol.2より抜粋)
2「紅の豚」は人間になる

<研究と実験のはじまり>
いかにして豚を木に登らせることができるのか、これが当面の大問題だった。ハム業界で無添加ハムは「ゆで豚肉」というだけに作り方の教科書はどこを探しても見つからない。全くのゼロから始めるしかなかった。
よし、うまいハムに到達するのが早いか、会社が潰れるのが先かは神のみぞ知る、やるしかない。猪突猛進とばかりに、1週間に半頭分の豚肉を切り刻んで、研究と実験が始まった。

<豚は自立できるか>
亜硝酸塩、リン酸塩を添加して本格的に作ったハムは確かに美味しい。フレーバー・色・食感、共に実に素晴らしい。肉加工品の逸品である。食史の中で鍛えられ、残って来ただけのことはある。
この重要な添加物をはずして、「はい、無添加ハムです」といったところで、今までのハムの概念やイメージと合わなければ「ゆで豚肉」と指摘されてもやむをえまい。しかし添加ハムと同質の美味しさを求めるのは間違いではないか。だとすれば、無添加ハムは、添加ハムとは違う、無添加ハム独自の美味と製造を創造し、層の上で完成させることが重要である。
これが安全で美味しいハムを求めている方々に対する、製造者の社会的責任だと勝手に決めてしまったのである。ヤレヤレ豚が自立するには時間がかかるものだ。

<初心は忘れられない>
昭和57年11月中旬、自家製の燻煙機の前には、外部の関係者と共に5人が集まっていた。試作品第1号のカナディアンロースハムが仕上がる時間だった。
燻煙機の鉄の扉がゆっくり開けられた。桜の煙と脂の焦げた芳ばしい香りが鼻をくすぐる。さっそく熱々のハムに包丁を入れた。
「うまい!」
参加者が口々にほめる、
「なんだ、これなら意外に早く製品が完成するね」
意気も高く第2試作品に取りかかった。結果は全く期待に反するものだった。1回目と同じ作り方をしたのに、なぜだか原因がさっぱりわからない。その後何度作っても、多少の差はあったが1回目より良くならなかった。
もう一度基本に戻って、やり直しだ。原料の質、塩漬けの日数とその間の管理。乾燥、燻煙時の庫内温度と外気温度。そして亜硝酸塩とリン酸塩の役割など、検討する事は山ほどあった。
十年過ぎた今も、「あの時のハムは美味しかった。あれと同じものは作れないか」と言われる。
感動しているときにあじわう味は、その物の味より数段素晴らしいということがあるものだ。

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